【書評】『TOKYO STYLE』たまには「物で溢れた部屋」を眺めるのも面白い

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もうずいぶん昔の話になるが、とある書店の文庫コーナーで面白い本の話、ちくま文庫から出版されていた「TOKYO STYLE」という本である。

表紙からして、いわゆるおしゃれなインテリアは言い難く、決して綺麗な部屋ではない、むしろその対極にある、散らかった空間です。

1990年代の東京の賃貸物件の部屋を写真に収めたものを収録しているだけのの本で、いわゆるインテリア映えしているわけではなく、とても綺麗な部屋とは言えない。むしろ雑然として部屋からは生活臭が滲み出ていて、逆に生々しさを感じるが、逆にそれがいい!

 

具体的なイメージを伝えられるものがないかSNSを探してみたら、こんなものがあった。

どうだろう、おそらく好き嫌いがはっきりするのではないだろうか。

 

自分もかつては汚い部屋に住んでいたが、物にあふれた空間にストレスを感じるようになり、今ではミニマリストと言われる人種になってしまった。今からこういう部屋に住めるかと言われれると、ちょっと無理かもしれない。

でも、なせかこの本に登場している部屋を眺めていると哀愁を感じてきて、なんだか憎めない。

 

この「TOKYO STYLE」を読んで個人的に興味を感じた点は2つ。

  • 90年代の生活の懐かしさ
  • バブルとは無縁の若者の倦怠感

この本の初版が出たのが1993年なので、収録されている写真は1990〜92年ぐらいの物が中心である。まだパソコンや携帯電話がまだ一般家庭に普及しない。

写真の中には、小型のブラウン管テレビ、どでかいステレオ(コンポ)、当時の人気タレントのポスターなど、当時の世相を反映されており、とても古臭く見えてしまう。だが、何か懐かしさすら感じてしまう。

「TOKYO STYLE」には豪華な写真集や分厚い雑誌に出てくるようなインテリアは登場しない。逆にごちゃごちゃと気持ち良く暮らしている若者を中心をした生活感に満ち溢れた小さい部屋ばかり。実際にそこで生活が営まれているリアルな風景を収めた1冊である。

出版された当時はバブルが崩壊し始めた時期と重なるが、若者はいつの時代でも貧乏金なし。10代後半から20代の頃の一人暮らしって、こういう感じだったなと自分の若いころと重ね合わたりすると面白い。

時には、この本に出ている部屋を見て、刺激を受けるのも悪くないかもしれない。個人的にこういうレトロで生活感ある光景が嫌いではない。それに見ているだけで単純に楽しい。またこういう本を探して、たまには過去を懐かしむのも良いかもしれない。