もうずいぶん昔の話になるが、とある書店の文庫コーナーで面白い本の話、ちくま文庫から出版されていた「TOKYO STYLE」という本である。
表紙からして、いわゆるおしゃれなインテリアは言い難く、決して綺麗な部屋ではない、むしろその対極にある、散らかった空間です。
1990年代の東京の賃貸物件の部屋を写真に収めたものを収録しているだけのの本で、いわゆるインテリア映えしているわけではなく、とても綺麗な部屋とは言えない。むしろ雑然として部屋からは生活臭が滲み出ていて、逆に生々しさを感じるが、逆にそれがいい!
具体的なイメージを伝えられるものがないかSNSを探してみたら、こんなものがあった。
12/2(日)読売新聞にて、都築響一著『TOKYO STYLE』(ちくま文庫)を「刊行から25年経っても、そのありさまは古びていない」と紹介頂きました。
小さい部屋が、わが宇宙。僕らが実際に住み、ごちゃごちゃと、しかし快適に暮らす本当の「トウキョウ・スタイル」はこんなものだ!https://t.co/mc9nsFD8Qp pic.twitter.com/6dVCEGAA3B
— 筑摩書房 (@chikumashobo) December 1, 2018
都築響一「TOKYO STYLE」
当時高くて(¥12000!)小さな文庫版しか持ってなかったけど、やっとオリジナルの大型版を入手!
90年代初頭の東京で暮らす若者の部屋をカブで走り回って撮影した写真集。自分もだけどこの本に衝撃と影響を受けた人も多いのでは?
もの凄い情報量で何年も楽しめる一冊 pic.twitter.com/2Wp9HjK0i1
— TAKUMA The Destroy All Stars (@manamoecat) June 10, 2019
都築響一「TOKYO STYLE」のデジタルリマスター版が特製USBで出ました。90年代の部屋のブラウン管テレビ、VHS、固定電話…書棚の本のタイトルやカセットのラベルまでディテールを拡大しながらご覧になれます。https://t.co/BuqBTVZbwd pic.twitter.com/HkkJBLP253
— タコシェ TACO ché (@tacoche) November 4, 2017
どうだろう、おそらく好き嫌いがはっきりするのではないだろうか。
自分もかつては汚い部屋に住んでいたが、物にあふれた空間にストレスを感じるようになり、今ではミニマリストと言われる人種になってしまった。今からこういう部屋に住めるかと言われれると、ちょっと無理かもしれない。
でも、なせかこの本に登場している部屋を眺めていると哀愁を感じてきて、なんだか憎めない。
この「TOKYO STYLE」を読んで個人的に興味を感じた点は2つ。
- 90年代の生活の懐かしさ
- バブルとは無縁の若者の倦怠感
この本の初版が出たのが1993年なので、収録されている写真は1990〜92年ぐらいの物が中心である。まだパソコンや携帯電話がまだ一般家庭に普及しない。
写真の中には、小型のブラウン管テレビ、どでかいステレオ(コンポ)、当時の人気タレントのポスターなど、当時の世相を反映されており、とても古臭く見えてしまう。だが、何か懐かしさすら感じてしまう。
「TOKYO STYLE」には豪華な写真集や分厚い雑誌に出てくるようなインテリアは登場しない。逆にごちゃごちゃと気持ち良く暮らしている若者を中心をした生活感に満ち溢れた小さい部屋ばかり。実際にそこで生活が営まれているリアルな風景を収めた1冊である。
出版された当時はバブルが崩壊し始めた時期と重なるが、若者はいつの時代でも貧乏金なし。10代後半から20代の頃の一人暮らしって、こういう感じだったなと自分の若いころと重ね合わたりすると面白い。
時には、この本に出ている部屋を見て、刺激を受けるのも悪くないかもしれない。個人的にこういうレトロで生活感ある光景が嫌いではない。それに見ているだけで単純に楽しい。またこういう本を探して、たまには過去を懐かしむのも良いかもしれない。